ITと経営の橋渡し役として期待される「ITコーディネータ」は、経済産業省が推奨する実務系の民間資格です。
中小企業のIT導入や業務改善、補助金申請の支援など、現場に即したスキルが求められる点で注目されています。
しかし一方で、「役に立たない」「知名度が低い」「実務で使われない」といったネガティブな声がネットやSNSで聞かれるのも事実です。
本記事では、そうした評価の背景を冷静に整理しつつ、ITコーディネータ資格の本当の価値を見極めるための視点をご紹介します。
取得を迷っている方や、これから活用を考えている方の判断材料として、ぜひ参考にしてください。
目次
ITコーディネータとはどんな資格?
経済産業省推奨の民間資格としての位置づけ
ITコーディネータ(ITC)は、経済産業省の施策の一環として設計された民間資格です。
情報処理技術者試験のような国家資格ではありませんが、中小企業のIT導入や経営支援を担う人材の育成を目的とした、実践重視の認定制度です。
中小企業のIT化支援・経営戦略の立案支援に特化
ITCがカバーする範囲は、単なるシステム導入のサポートではありません。
業務改善や経営戦略の策定、IT利活用の提案といった、経営とITを結びつける役割に特化しています。
企業の“困りごと”に対し、システムだけでなく業務や組織レベルでのアプローチが求められるのが特徴です。
他のIT資格(基本情報・ストラテジスト・ITIL等)との違い
- 基本情報・応用情報:IT技術の基礎・応用を問う試験
- ITストラテジスト:経営戦略とITをつなぐ、上級IT資格(国家試験)
- ITIL:ITサービスマネジメントに特化した国際資格
これらに対し、ITCはより「現場寄りの提案・支援活動」を主軸に置いた資格であり、コンサルタント志向の内容が強いのが特徴です。
ITコーディネータが「役に立たない」と言われる4つの理由と実態
役に立たないと言われる理由① 知名度が低く、社外評価につながりにくい
一部のIT資格に比べ、ITコーディネータの名前はあまり知られていません。
採用や転職市場でも「必須資格」として扱われることは少なく、社外へのアピール材料としての力が弱いという現実があります。
役に立たないと言われる理由② 資格取得=実務力ではないというギャップ
講義と演習を受講し、一定の評価を得ることで認定されるITCは、試験方式の国家資格とは異なります。
そのため「実務で活躍できる人」と「資格を持っているだけの人」の差が目立ちやすく、実力と結びつかない印象を持たれることもあります。
役に立たないと言われる理由③ 企業によっては活用シーンが少ない現実
大企業やSIerでは、専門部署やPMが業務改革やIT導入を担うことが多く、ITCが活躍する余地が限られる場合があります。
とくにIT部門が明確に分業されている環境では、役割の重複が起きやすくなります。
役に立たないと言われる理由④ IT未経験者でも取れてしまう→“名ばかり”扱いの誤解
理論上はIT未経験者でも取得可能なため、「実務能力の証明にはならない」と見なされることがあります。
ただし、資格の設計としては、実務と実践力を重視した内容になっており、適切な経験と組み合わせることで大きな価値を持ちます。
ITコーディネータが実際に役立っているケースとメリット
中小企業・自治体支援での強み
中小企業や自治体では、IT部門を内製化していないケースも多く、外部からの支援に頼る場面が増えています。
こうした現場で、ITCの知識と経験を活かし、業務改善・業務システム導入・IT戦略策定を支援する事例は数多くあります。
ITと経営の橋渡し役としての活用事例
たとえば以下のようなケースで活躍しています。
- 補助金申請支援(IT導入補助金、事業再構築補助金など)
- 販売・生産・財務など部門間をつなぐIT活用の設計
- 業務フロー改善とシステム導入の一体支援
これらは技術だけでなく、経営的な視点や現場感覚が求められる業務であり、ITCの強みが活かされる場面です。
コンサルタントや独立系支援人材としての評価
フリーランスや中小企業診断士と兼業する形で、ITCを武器に活動している人もいます。
特にITに弱いクライアントとの橋渡し役として、「話がわかるコンサル」として重宝される存在です。
こんな人には「ITコーディネータ」は向いている!
以下のような人には、ITCは非常に有効な資格となり得ます。
- ITだけでなく「経営・業務改善」視点を持ちたい
- 中小企業支援や地方自治体のDX推進に関わりたい
- 技術というより「提案力・調整力・説明力」を武器にしたい
「開発者」や「専門技術者」ではなく、「現場と経営のつなぎ役」を志向する人にフィットする資格です。
ITコーディネータを活かすために必要な“プラスα”のスキル・工夫
実務経験・補助金知識・ツール知識とセットで活きる
資格単体ではなく、以下のような実務的な引き出しを持っていると、より価値が高まります。
- 補助金制度の知識(特にIT導入補助金)
- Excelや業務改善ツール(BPR、ERP等)の活用経験
- 要件定義やプロジェクトマネジメントのスキル
他資格との組み合わせで「価値」が引き立つ
以下のような資格と組み合わせると、より実務での信頼性が上がります。
- 中小企業診断士:経営診断力との相乗効果
- ITストラテジスト:経営IT戦略の論理性を補完
- PMP:プロジェクト遂行力の裏付けとして
資格取得後の継続的なアップデートが必須
ITCは「取得して終わり」ではなく、継続的な自己研鑽が前提の資格です。
フォローアップ研修やセミナー参加を通じて、知識の鮮度を保つことが期待されています。
まとめ
「役に立たない」と決めつけるのは早計
確かに、ITCは“誰でも取れる”イメージや知名度の低さから、過小評価されがちな資格です。
しかしその設計や役割を見ると、実務現場において必要とされるスキルが詰まった、実践的な資格であることは明らかです。
資格の本当の価値は「どう使うか」によって決まる
どんな資格も、それをどこで、どう活かすかで評価は変わります。
ITCも同様で、活かす現場と自分の視点を正しく持てば、大きな武器になる資格です。
自分のキャリアや業務にどう結びつけるかを見極めよう
ITコーディネータという資格は、あなたのキャリアの方向性や働き方によって、大きく評価が変わるものです。
「使える資格」にするかどうかは、あなた次第です。