ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、ITサービス管理(ITSM)のベストプラクティスを体系化したフレームワークです。
多くの企業がITサービスの品質向上のために導入しており、ITIL資格はIT運用や管理に関わる人にとって有用な資格とされています。
しかし、一部では「ITILは意味ない」「資格を取っても役に立たない」と言われることもあります。
- ITIL資格を取るメリットはあるのか?
- 実務で本当に役に立つのか?
- 転職やキャリアアップに有利なのか?
本記事では、ITILの価値、取得するメリット・デメリット、どんな人に向いているのかを詳しく解説します。
目次
ITILとは?資格の基本情報
ITILの概要
ITILは、ITサービスを効率的に管理・運用するためのフレームワークで、英国政府が開発し、現在はAXELOS(PeopleCert)が管理しています。
このフレームワークでは、インシデント管理、変更管理、問題管理、リリース管理などのプロセスを標準化し、ITサービスの品質を向上させることを目的としています。
ITIL資格の種類
ITIL(アイティル)は、ITサービスマネジメント(ITSM)のベストプラクティスを体系化した資格体系です。
現在主流のバージョンは ITIL 4 で、以下のような階層構造になっています。
1. ITIL® 4 Foundation(ファンデーション)
- 【対象】初学者、ITSM初心者、すべての業務従事者
- 【内容】ITILの基本概念、用語、原則など、全体像を学ぶ入門資格
- 【試験形式】選択式(40問)、26問以上正解で合格(65%)
2. ITIL® 4 Specialist / Strategist / Leader(上位モジュール)
Foundation取得後、目的に応じて以下のモジュールに進みます:
ITIL 4 Specialist
- Create, Deliver and Support(CDS):サービス提供・運用の実務向け
- Drive Stakeholder Value(DSV):顧客・関係者との関係構築に特化
- High-velocity IT(HVIT):アジャイル・DevOpsなど高速変化に対応するIT
- Plan, Improve and Optimize(旧:Direct, Plan and Improve DPI):継続的改善とガバナンスの知識を学ぶ
ITIL 4 Strategist
- Digital and IT Strategy(DITS):戦略的視点でITをマネジメントしたい方向け
ITIL 4 Leader
- Digital and IT Strategy(DITS)(※上と共通):経営や戦略に関わるリーダー向けモジュール
ITIL資格の受験情報
- 試験方式:選択式(オンライン受験可能)
- 合格基準:65%(40問中26問正解)
- 受験料:約4~6万円(試験機関による)
ITILは意味ないと言われる3つの理由
ITILは世界的に認知されたフレームワークですが、「意味がない」と言われる理由もいくつかあります。
ITIL意味ない理由① 資格を取るだけではスキルにならない
ITIL資格は、知識を問う試験であり、実務スキルを証明するものではないため、「資格を持っていても、実務で使えない人が多い」という声があります。
特に、試験対策のために暗記だけで合格した人は、実際の業務でITILのプロセスを活用できず、「意味がない」と感じることがあるようです。
ITIL意味ない理由② 日本国内での認知度が低い
ITILは、外資系企業や大手企業では評価されることが多いですが、日本国内の中小企業では「ITILって何?」という反応をされることも少なくありません。
そのため、資格を持っていても転職市場での評価が分かれる点がデメリットとされています。
ITIL意味ない理由③ 実務では柔軟な対応が求められる
ITILのフレームワークは、あくまで「ベストプラクティス(最適な手法)」の集まりです。
しかし、実務では必ずしもマニュアル通りに対応できるわけではなく、状況に応じた柔軟な対応が必要になります。
そのため、「ITILの理論は分かるけど、実際の現場ではその通りに動けない」
といったギャップが生じることがあり、「資格を持っていても意味がない」と感じる人もいます。
それでもITILを取得する3つのメリット
一方で、ITIL資格を取得することで得られるメリットも多くあります。
ITILを取得するメリット① ITサービス管理の知識が体系的に学べる
ITILは、ITサービス管理(ITSM)の基本的な考え方を学ぶのに最適なフレームワークです。
特に、IT運用やシステム管理の業務に携わる人にとって、業務の標準化や効率化のヒントを得られるというメリットがあります。
ITILを取得するメリット② 外資系企業や大手企業では評価される
ITILは、グローバルで認知されている資格のため、外資系企業やITILを導入している企業では評価されやすいです。
特に、IT運用やヘルプデスクの分野では、ITILの知識を持っていることで業務の理解がスムーズになるため、キャリアアップにつながる可能性があります。
ITILを取得するメリット③ ITエンジニア以外のキャリアにも活かせる
ITILの知識は、システム管理や運用だけでなく、プロジェクト管理やITコンサルティングの分野でも役立ちます。
そのため、エンジニアからITマネージャーやコンサルタントにキャリアチェンジを考えている人にも有益です。
ITIL資格はどんな人に向いている?
ITILを取得すべき人
- IT運用・ヘルプデスク・システム管理の仕事をしている人
- 外資系企業や大手企業でのキャリアアップを目指す人
- ITサービス管理の知識を体系的に学びたい人
- プロジェクト管理やITコンサルティングに興味がある人
ITILを取らなくてもいい人
❌ エンジニアとして開発・プログラミングをメインにしたい人
❌ 実務経験が豊富で、すでにIT運用の知識を持っている人
❌ 日本国内の中小企業に勤務しており、ITILが評価されにくい環境の人
まとめ|ITILは意味がないわけではないが、目的次第
- ITILは、ITサービス管理の基礎を学ぶのに適した資格
- 外資系企業やIT運用の分野では評価されやすい
- 資格だけでは実務スキルが証明できないため、実践での活用が重要
- 転職市場での評価は企業によって異なるため、キャリアに合わせて取得を検討すべき
ITIL資格は、「取得すること自体に意味がある」というより、ITサービス管理の知識を活用できる環境でこそ価値を発揮する資格です。
自分のキャリアプランと照らし合わせて、取得するかどうかを判断しましょう。